在日韓国人同士の夫婦です。離婚調停を申立てましたが、離婚に同意しません。裁判で離婚が認められるのはどのような場合ですか?
韓国法上の離婚原因が認められる場合は、裁判上も離婚請求が認容されうることになります。
この問題について、当事務所の弁護士が解説いたします。
解説
韓国法上の離婚原因は、
①配偶者に不貞な行為があったとき(韓国民法840条1号)
②配偶者が悪意で他の一方を遺棄したとき(韓国民法840条2号)
③配偶者又はその直系尊属(主に両親や祖父母)から著しく不当な待遇を受けたとき(韓国民法840条3号)
④自己の直系尊属が配偶者から著しく不当な待遇を受けたとき(韓国民法840条4号)
⑤配偶者の生死が3年以上明らかでないとき(韓国民法840条5号)
⑥その他婚姻を継続することが困難な重大な事由があるとき(韓国民法840条6号)
であり、日本の民法上の離婚原因とは異なりますので、注意が必要です。
このうち、①配偶者の不貞行為に関しては、日本でも離婚原因となりますが、日本法上の不貞行為は、肉体関係やそれを推認させる事実まで必要となります。
しかし、韓国法上の離婚原因である不貞行為は、
「配偶者としての貞操義務に忠実ではない一切の行為を含むいわゆる姦通よりも広い概念であり、不貞な行為であるかどうかは、それぞれの具体的事案によってその程度と状況を参酌して、これを評価すべきである」(大判1963年3月14日64ダ54)
と判示されています。
また、③の配偶者又は祖父母から著しく不当な待遇を受けたときというのは、「婚姻関係の持続を強要することが非常に困難であると考えられる程度の暴行や虐待又は侮辱を受けた場合」とされています。
配偶者の直系尊属によるこれらの行為に関しては、夫婦関係中心主義に鑑み、これのみによって離婚を認めるべきではなく、そのような待遇が夫婦関係の維持・継続を期待できない程度に夫婦関係を破綻させるに至ったときに始めて離婚が許されると解すべきとされています。
④自己の直系尊属が配偶者から著しく不当な待遇を受けたときも、③と同様、夫婦関係中心主義に鑑み、このような待遇が夫婦関係の維持・継続を期待できない程度に夫婦関係を破綻させるに至ったといえることまで必要となります。
なお、韓国民法上の離婚原因中、①不貞による離婚請求権や⑥その他婚姻を継続することが困難な重大な事由については、一定期間の経過による請求権の消滅が規定されているため、注意が必要です。
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